日本の宇宙開発の未来

1990年代、東京大学大学院の研究室で、中須賀教授と山﨑飛行士は共に宇宙を夢見ていた。新たなフロンティアに踏み出した人類について。また、そこでの工学や技術の醍醐味とは。日本と世界の宇宙開発の現場を伺った。

■のめり込むものを追い求めるのが工学者。
中須賀 ── 宇宙って、3次元的にものが見られる世界です。地上にいると平面的に見えていたものが、上から見ることによって、俯瞰的に広い世界を同時に見られるんですね。基本的に人工衛星では、その特性を利用しているわけです。

常に地球をモニターして、ここで災害が起こったとか、あるいはここで紛争が起こっているとか、森林の中で火災が起こったり、不法伐採が起こっているとか、不法投棄が起こっているとか、赤潮が来たとか、いろんな情報を非常にうまく取れるわけなんですね。地球を上から見る眼のネットワークを作りたいというのが、僕らの小さい衛星に懸ける思いなんです。

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山崎 ── 私たちのいるこの足元を離れて見ると、地球のことがより分かります。気象衛星、通信衛星、GPS、さまざまな人工衛星が実用化されて使われていますが、それにプラスして、やはり人が行くということが実現していくといいなと思うんですね。

やっぱり宇宙から自分たちの住む星を、ぜひ見てほしいと思いますし、そうすることで、きっとまた新しい文化が生まれて、地球自身の文明が成熟していくという気がするんですね。

中須賀 ── まさにそうですよね。

山崎 ── もう1つ、私も訓練の時にアメリカだったりロシアだったり、いろいろ海外生活を経験しました。日本人も海外でたくさん働いている方がいらっしゃいます。家族や友達は日本にいて、自分は海外にいるとか。そういった時に「どこでもドア」が欲しいなって、本当に思っていたんです。

これから観光で使われるような宇宙船は、燃費や機体性能を改良すると、大陸横断をして他の地点に着地できます。そうなると日本とアメリカを2時間ぐらいで結べるかなと思うんです。

中須賀 ── 世界中の全ての地点を2時間以内で結ぶ移動手段ですね。

山崎 ── ええ。主要なところを、世界中どこでも日帰りで行ける世の中になります。そうなると、人の流れとものの流れが圧倒的に変わりますよね。どうしても急にそこに行きたい、行かないといけないことはやっぱりあるので、そうした人の需要を満たせますから。私自身もそれができるとスゴく嬉しいです。

中須賀 ── 宇宙が持っているロマンを生かして、小さな衛星を使っていろんなことをやりたい企業がたくさんあります。そうしたところと組んで「こんな利用のしかたがあるのか」と世間にも浸透してきたら、もっと多くの企業が乗り出します。そうして、どんどん地球の周りの衛星のインフラができていけば、次の宇宙開発へのステップへの敷居が下がるわけです。その最初になるのが小さな衛星かな、と思っています。

具体的な値段で言うと、数億円以下で作る衛星です。同じ機能ではないけれども、さらに小規模な衛星だったら数千万でできます。そのぐらいになれば、国や大企業だけではなく、大学とか、中小企業とか、地方自治体などがユーザーになり始めますから、そうした世の中を作っていきたいですね。

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──最後にぜひ読者へのメッセージを。

中須賀 ── 工学的な立場から言えば、自分がのめり込めるものを見つけるのが一番大事です。若い人たちには、それを徹底的に追求することをぜひやってほしいですね。のめり込むものって、何かその人が持っている考え方だとか、素質というものに非常に近いから反応しているわけです。それを伸ばしていってほしいなと思います。

僕はちょっとそれが十分にできなかったと思っているから、そうならないように頑張ってほしいと思う。受験なんか、どうでもいいんですよ。

──先生がのめり込んだものって、何だったんですか?

中須賀 ── 僕の場合、ものづくりですね。プラモデルとか工作とか、ものすごく好きでいろいろやっていたのだけど、受験勉強をするからしばらくやめようと思って、自分からやめちゃったんです。

その後、回り道をして結局は戻ってきたところはあるんですが(笑)、本当にその人が持っている特性が生かされないで終わってしまう人って、いっぱいいると思うんですよね。

山崎 ── やっぱり何事もやる時には、長い道のりを経ることが多いと思います。宇宙飛行士の訓練にしても10年以上かかりますし、そうした時間の中で「好き」という単純な思いって、一番大きなエネルギーになりますよね。
特に先が見えないときには、そうだと思うんです。どのような研究にしても、ものづくりにしても、壁に当たる時もあれば、先行きが見えない時もある。未来なんて、誰にも分からないですから。

だから、それをうまく見つけられるかが大切です。今まで持っていた考えにあまり捉われず、自分の心をオープンにして、そういったものを見つけてもらえるとスゴくいいな、と思います。

──お子さんには宇宙へ行ってほしいですか?

山崎 ── はい、子どもにも行ってほしいです。この地球を見てほしいと思います。

中須賀 ── 行ける時代がもうそこまで来ていますからね。

(完)

記事提供:テレスコープマガジン

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