日本の宇宙開発の未来

1990年代、東京大学大学院の研究室で、中須賀教授と山﨑飛行士は共に宇宙を夢見ていた。新たなフロンティアに踏み出した人類について。また、そこでの工学や技術の醍醐味とは。日本と世界の宇宙開発の現場を伺った。

■足し算じゃない、それがシステム。
山崎 ── 私は修士の1年間、アメリカのメリーランド大学に留学しました。片田舎の州立大学でもNASAの生データ、実際に人工衛星を打ち上げたときの姿勢データなどをそのままバリバリ使えることに驚きました。

中須賀先生もおっしゃったように、大学で研究したり、研究機関で働いていても、宇宙ってなかなか遠いなと日本では実感していました。やっぱり現場で働きたいので、日本に戻ってからJAXAでエンジニアとして働き出して3年ぐらい経った後、宇宙飛行士の候補者になったんです。

中須賀 ── JAXAにいた最初の3年間、どんなことをしていたんですか?

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山崎 ── 配属されたのが、宇宙ステーションのプロジェクトチームだったんですね。JAXAというのは各メーカーが作ったモノを束ね、1つにまとめ上げるところです。その過程でインターフェイスを試験したり、手順書を整えたり、海外とのインターフェイスを取り仕切ったりと、いわゆるシステムインテグレーションを担っています。

田辺先生も、よく「システム」ということを、口を酸っぱくして言われていましたよね。

中須賀 ── とにかくシステムが大事だって。僕、1日に何回「システム」と言うか数えていたことがあるよ。120回だった(笑)。

山崎 ── 数える方もどうかと思いますけど(笑)、学生の頃「ふーん」って、よく分からなかったんです。社会人になってそうした現場に配属され、少し分かるようになりました。

中須賀 ── 結局システムは何かというと、単なる要素の足し算じゃないってことなんですよね。要素が山のようにあり、それをまとめ上げて衛星のような宇宙システムが初めてできるんです。宇宙ステーションなんかもっと多いよね。

山崎 ── 日本が作った「きぼう」で約250万点と言われています。

中須賀 ── それだけの数の部品がちゃんとピタッと合って、全部が動作しないと動かないって、スゴい世界ですよね。それを組み上げていったのがシステム。我々はそういう航空宇宙学の中で、システムを作ることを勉強してきたんですね。その経験は生かされましたか?

山崎 ── ええ。部品自体は信頼性を求めて、それぞれ究極の試験を重ねて作ります。それでも、100%じゃなくて、どこかで必ず壊れるときがあります。有人宇宙機では、どれか1つの部品が壊れてもミッションが達成できること(ワン・フェール・オペラブル)、かつ、独立した2つの部品が壊れても、宇宙船と人の命が守られること(トゥー・フェール・セーフ)という考えが絶対の思想です。

中須賀 ── 普通の人工衛星なら「ワン・フェール・セーフ」まで。トゥー・フェール・セーフって、大変に難しいです。全く違う部品が2つ壊れたとき、全ての組み合わせで問題が起こらないことを実証しなきゃいけないんですから。

山崎 ── こうなると本当にシステムインテグレーションの世界です。様々なサブシステムを束ねた時の全体像を把握しないといけないんです。

中須賀 ── 飛行機も同じですよね。長い時間飛んでいるときに落ちないようにしなきゃいけないから、どれだけ部品が壊れても全体が死なないようにする。知らない間にシステム、システムという言葉を聞きながら我々は何となく考える癖を身に付けていたんですね。

山崎 ── ちなみに小型衛星はどのぐらいの部品点数で作るんですか?

中須賀 ── 数千点です。小型衛星は逆に、部品の点数をできる限り少なくしますね。部品点数が多いとインターフェイスポイントが増えて、故障が起こる可能性やロジックの間違いが入ってきやすいですから。なるだけシンプルに作るのがコツですね。前の打ち上げで実証した集積回路を持ってきて、そのままいじらずにやるとか。

つづく

記事提供:テレスコープマガジン

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