佐々木小次郎

人間って夢に向かって生きてるんじゃない?

仕事であれ、趣味であれ、好きなことができたら「明日、目が覚めたらまたできる。」

昨日には夢がない、過ぎた日に夢はない、今晩、明日、未来には夢がある。

生きるって夢に向かって突進していく人間の姿なんじゃないかなぁ。


好きな女ができた。



今日会って「さよなら」と別れて、余韻に浸る閑もなく直ぐに電話をして声を聞く。

目覚めるとまた会いたくなる。

心を制御することすら満足にできず、夢を現実のものにしようと懸命にもがく。



人間の欲望って様々。



好きなものを自分のものにしたい、手に入れたい、口にしたい、支配したい・・・。

簡単じゃないものほど強い願望になってなんとかしなくちゃとなる。



明日が待ち遠しい。



明日を待てないことだってある。叶えたいという気持ちがいきるということ。

死は夢を無残に葬る。真っ当であろうと、悪人であろうと、夢に向かって生きている。



今日、やさしい24は怒った顔で差し迫ってきた。そしてこう言ったのさ。

「好きな女は嫌いな女になってから愛せるものなのさ。」



封筒に入りきらない札束を口にくわえ、僕は目の前のガードレールを飛び越えた。

何かを踏んだ感触があった。足元を見るとカエルを踏み潰していた。



潰れたカエルの哀れさを胸いっぱいに膨らませ、カエルをよくみて見ると好きな女だった。



僕が選んだ世界で出会ったけど、触れられぬ事情が輝きを増して、

僕らが愛し合うことで、君が選んだ世界の人々が苦しむみたいだね。



今は、お互いの想い出になろう。そして、いつか互いの世界が許しあえたなら、

僕はどこの世界だろうと、君を離しはしない。



ピンポーン。



「おや、誰だろう?」



僕は忍び足で玄関に向かい、小声で「どなたですか・・・」そう聞いた。



「佐々木小次郎です。」





あぁ、明智小五郎が良かったのに。。それか越野さん。



結局、佐々木小次郎をアトリエに招き入れ、絵を描いた。



佐々木小次郎は僕の絵を見て「素晴らしいです。」そう言い残すと突如、消えた。



しばらくしてやさしい24が現れ、「つけ麺に行こう。」と誘ってくれた。



そして、ついでに「佐々木小次郎は目が見えてないから、さっきの<素晴らしいです。>は嘘だよ。」



あぁ、やさしい嘘に囲まれて、今夜は流れ星になろう。


2013_はじめ筒井はじめ(Tsutsui Hajime)

芸術家。東京都出身。小学生の時からアート活動を開始。賞歴は6歳から始まる。手掛けるデザインはファッション界も強く結びつき、早乙女太一の着物をはじめ、数多くの女優の衣装を担当する。各界から注目されはじめ、2013年4月ロイヤルミュージアム上野の森美術館で個展を開催した。日本お地蔵さまを守る会の臨時副会長。
FaceBookアカウント:筒井はじめ

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