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太陽光発電所の建設計画が各所で進む一方で、太陽電池の用途を広げるための研究開発も進められている。柔軟性の高い太陽電池ができれば、小型の電子機器にも搭載しやすくなるし、さらには発電できる衣服なども実現できる可能性が開けるのだ。
有機半導体は印刷技術で製造できるため、低コストで大面積の太陽電池につながると期待されている。2012年4月には、東京大学大学院の染谷教授、関谷准教授らの研究グループが、厚さ1.4マイクロメートルの極薄高分子フィルムに世界最薄・最軽量の有機太陽電池を作成することに成功。この太陽電池はエネルギー変換効率4.2%を維持したまま、自由に曲げたり伸ばしたりできる。

変換効率が10~20%と高いシリコン系太陽電池は、硬くて形状を変えられないというのが常識だったが、この常識も覆されつつある。ビーズのような球状シリコン系太陽電池はすでに実現されており、2012年12月には直径1.2ミリメートルの球状太陽電池を多数織り込んだ布地の試作に、福井県工業技術センターとスフェラーパワーが成功している。

そして同じ12月には、ペンシルベニア州立大学のJohn Badding教授を中心とする国際チームが、シリコンベースの光ファイバーを開発した。これは光ファイバーと半導体チップを結合したものではなく、光ファイバー自体が太陽電池の機能を備えている。高圧化学技術を用いて、光ファイバーの微小な穴で一層ずつ半導体材料を成長させることにより可能になった。

このファイバー太陽電池は、人間の髪の毛よりも細く、発電機やセンサー、バッテリーの充電といった用途が検討されている。現在、数メートルの光ファイバーはすでに作成されており、Badding教授によれば、長さ10メートル以上の折り曲げ可能な太陽電池ファイバーも作成可能だという。

(文/山路達也)

記事提供:テレスコープマガジン