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車や工場からの排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)は、大気汚染の原因物質で、人間が吸い込むと気管支炎などを引き起こす。このため、最近では多くの自治体で窒素酸化物を減らすための法的な規制が設けられ、それに応じてメーカーもディーゼルエンジンやボイラーの改良を進めている。

英国のシェフィールド大学とロンドン・カレッジ・オブ・ファッションが共同で進めている「Catalytic Clothing」プロジェクトは、従来とはまったく異なるアプローチで窒素酸化物を減らそうという取り組みだ。

このプロジェクトのキーは、「CatClo」という液体。衣服を洗濯する際にCatCloを加えると、二酸化チタンのナノ粒子が衣服に付着する。二酸化チタンは光触媒として利用されている物質で、紫外線が当たると大気中の窒素酸化物を分解する働きがある。服を着て歩けば、窒素酸化物が分解され、安全に衣服へ定着されるというわけだ。分解された窒素酸化物は無臭無色で、健康被害を引き起こすこともない。衣服をもう一度洗濯すれば、窒素酸化物は安全に除去される。

CatCloで洗濯した衣服を着た人は、1日で5グラム程度の窒素酸化物を大気中から減らすことができると試算されている。これは、乗用車1台から1日に排出される窒素酸化物に相当する。

プロジェクトを主導しているシェフィールド大学のTony Ryan教授によれば、何千人という人々がCatCloで洗濯した服を着て歩くことで、地域の大気汚染が大幅に改善されるという。現在、プロジェクトはメーカーと共にCatCloの製品化を進めており、1回の洗濯当たりのCatCloのコストは10ペンス(約10円)程度になる見込みである。

(文/山路達也)

記事提供:テレスコープマガジン