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遙かな過去について知る手がかりとなる遺物は、ごくごく限られている。洞窟に刻まれたシンボルや石造りの建造物は数千年を経て発見されることもあるが、複雑な情報を記した媒体は長期間の保存が難しい。現存する最古のパピルス古文書でも紀元前340年前のものにすぎない。現在の私たちが利用している紙は、酸性紙で50年程度、中性紙でその3~4倍と言われている。
デジタル媒体については、CDで30年程度、長寿命を売りにした最新のSSD(ソリッドステートドライブ。フラッシュメモリをハードディスクのように使う記憶媒体)で100年程度である。また、デジタル媒体は、それ専用に設計された読み出し装置も必要だ。

数千年、数万年先の未来に、確実に情報を届けるための媒体を私たちはまだ持っていない。たいていの人はそんな未来にまで情報を残す必要を感じないだろうが、どうしても伝えなければならない情報もある。その1つが、放射性廃棄物に関する情報だ。

ドイツ、フランス、フィンランドなどでは、地下深く(地層から500メートル以上)に高レベル放射性廃棄物を埋設処理するプロジェクトが進められている。こうしたプロジェクトにおいてまだ未解決な問題が、未来の人類(あるいは人類以外の知性体)にどうやって放射性廃棄物の危険性を伝えるかだ。未来の考古学者などがうっかり放射性廃棄物を掘り当ててしまう可能性がある。

2010年、フランスのANDRA(放射性廃棄物管理機関)はこの問題に対処するためのプロジェクトを開始して各分野の専門家による検討を進めてきた。2012年7月、同機関のPatrck Charton氏が有望なソリューションの1案を発表した。このソリューションでは、直径20センチメートルの工業製サファイヤでできたディスクを使用する。ディスクにはプラチナを使ってテキストや図を刻み込み、40000ページの書籍に相当する情報を100万年以上保持できるという(読み取りには顕微鏡を使う)。サンプルの試作費用は25,000ユーロで、現在強酸に浸す耐久性テストが行われている。ただし、未来の人類に情報を伝えるために、どの言語を使うかはまだ検討中ということである。

写真:スエーデンにある核廃棄物処理施設。地中数百メートルに数10万年保存される計画。 Photo Credit: Jorchr

(文/山路達也)


記事提供:テレスコープマガジン