topimg_news36_01

世界各地で雨乞いの儀式が行われてきたことからもわかるように、天候、特に雨を自在に操るというのは古代からの宿願だったといっていい。近年では、ヨウ化銀(無機化合物の一種で、銀のヨウ化物)を使った人工降雨が中国を中心に行われている。
小型ロケットなどを使ってヨウ化銀を雲の中で散布すると、これらが核となって雪片を形成しながら落下し、雨になるという仕組みだ。ただし、ヨウ化銀には弱い毒性があり、環境や人体への影響があるのではないかとも懸念されている。

スイスジュネーブ大学のJeromeKasparian博士らが研究しているのは、レーザーによる人工降雨だ。高出力レーザーを湿った空気に照射すると、数マイクロメートルという細かな水の粒子が作られる。この水の粒子は雨滴の1/100も小さいが、水が凝結(気体から液体に変化)する過程で、より大きな雨滴になっていくことがわかった。
レーザーによる人工降雨を実現するためには、現在のところいくつかの課題がある。

1つは、レーザーの高出力化が必要であること。研究チームが実験に用いたのは、100テラワットと5テラワット(1テラワット=1兆ワット)のレーザーだが、レーザーの進歩は急速で、近い将来にはエクサワット(1エクサワット=100万テラワット)も登場すると予想されている。これだけの出力ならば、人工降雨に使えるのではないかと期待されている。ただし、高出力レーザーを発振する費用対効果も問われることになる。

もう1つ、人工降雨に必要なのが、降雨の仕組みの解明だ。大気に光が当たるとオゾンと窒素酸化物が作られ、硝酸の粒子を形成、周囲の水分子を集めて雨滴になっていく。こうしたプロセスの詳細と、大気の状態が降雨にどのような影響を与えるのかを知ることが、人工降雨の実現には欠かせない。

人工降雨が実現されるまでには、まだまだ超えなければならない壁がたくさんあるが、レーザー方式には他の方式にはない大きなメリットがある。ヨウ化銀のように環境や人体に影響があるかもしれない化学物質を使わずに済むこと。そして、化学物質を使う手法と比較して、より正確なコントロールが行えることだ。

写真:霧箱内でレーザーを照射して、水を凝結させているところ。

(文/山路達也)


記事提供:TELESCOPE Magazine