モバキャス


地デジ移行で気になるのが、移行した跡地を何に使うのかという点です。
用途として決定しており、すでに各種準備が始まっているのが、携帯端末向けマルチメディア放送です。
以前の記事ではmmbiに決定したと書きましたが、総務省による決定後、mmbiが会社分割を行い、放送事業は株式会社ジャパン・モバイルキャスティングになりました。mmbiはそこでソフトを提供する事業者の1つとなります。
その、ジャパン・モバイルキャスティングのサービス名が「モバキャス」に決定しました。


モバキャスはサービスの名称で、ジャパン・モバイルキャスティングが自体は電波を実際に出したりする放送事業者で受託放送事業者になります。その中で放送される実際の内容を製作するのは、ソフト事業者でそれがmmbiなどになります。
このモバキャスがスタートするのは2012年4月です。

■何を放送するのか不明なモバキャス
現在モバキャスでは具体的にどんな内容の番組が放送されるのか決まっていません。というのも、その中身を提供するソフト事業者がまだ正式に決まっていないからで、mmbiや複数の事業者が参加すると思われますが、どんな内容の放送になるのかも決まっていません。
技術的には通常のTVと同じリアルタイムの放送、端末がデータを事前に受信できるので、蓄積型の動画など含む様々なデータの受信もできます。このリアルタイムの放送と蓄積型コンテンツの2つがこのマルチメディア放送の特徴となります。
また、スマートフォンでの対応によって、放送を見ながら関連Twitterのライムラインを参照するような通常の通信と融合するようなサービスも考えられているようです。

これらの放送やサービスは、具体的な内容が明示されていない以上、現在のワンセグやインターネットを使用したサービスと何がどう違い、利便性があるのかわからない状態というのが実際のところです。
放送開始は2012年4月なので、それまでに具体的なイメージ含め、魅力的なコンテンツが提示されるでしょう。

■対応端末が必須で当初エリアも限られる
当然ながらこのサービスを利用するには対応端末が必要です。
2010年に販売されていたほとんどの日本の携帯電話(フィーチャーホン)にはワンセグ機能が内蔵されていました。これと同様に日本で販売される携帯電話やスマートフォンには、この「モバキャス」に対応するようになるでしょう。
サービス開始は2012年4月なので、2012年初頭に発売される日本仕様のスマートフォンの何機種かから対応すると思われます。この株主にはNTTドコモが入っているので、少なくともドコモ製の端末では対応するでしょう。

地デジの対応や新しい通信サービスは都心から開始し、順次エリアが拡大していましたが、このモバキャスも同じように順次放送エリアが拡大します。2012年4月にスタートするのは東名阪など主要都市で、1年目の世帯カバー率は約73%、2014年度には約91%の世帯カバー率を予定しています。

■モバキャスは普及するのか?
料金は現在のところ、月額数百円になる事が予定されています。視聴には対応端末が必要、放送エリアも当初限られるという状況で、2012年度の加入者数は100万、開始後5年で5,000万台の端末普及を想定しているようです。
携帯電話は日本で1年間に3,000万台から4,000万台程度販売されているので、5年で5,000万台の普及には最低でも3割程度の端末がこのモバキャスに対応する必要があります。

インターネット上の動画サービスではYouTubeやニコニコ動画、Ustreamなど、無料で楽しめる動画コンテンツがたくさんあり今後も増えるでしょう。また、映画などの動画配信サービスも様々なところから始まっています。放送コンテンツでは無料のワンセグもあります。
放送内容も決まっていない段階ですが、モバキャスの普及にはかなり高いハードルがあると言えるでしょう。

ISDB-T マルチメディアフォーラム
株式会社mmbi
株式会社ジャパン・モバイルキャスティング

上倉賢 @kamikura [digi2(デジ通)]

digi2は「デジタル通」の略です。現在のデジタル機器は使いこなしが難しくなっています。
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