米Appleの新たなクラウドサービスiCloud(アイクラウド)が発表された。メールや連絡先、画像、ドキュメントなどのデータを自動的にクラウド上に転送し、Mac、PC、iPhone、iPad、iPod Touchでデータを同期できるというサービスだ。提供されるストレージ容量は5GBで、iPhone、iPad、iPod Touchの新OS(基本ソフト)であるiOS 5のリリースと同時、今秋に始まる予定だ。


■MobileMeから大きく進化
これまでも、AppleのサービスであるMobileMe(年9800円)を使うことで、Safariのブックマークやカレンダー、連絡先などを同期することはできた。だが、複数のMacやPC間ではMobileMeで、iPhone、iPad、iPodとはiTunes経由で同期するという具合で複雑。しかも、カレンダーなど一部のデータはプッシュ機能を使って、iTunes経由でなくても同期できたから、ユーザーは混乱さえした。価格問題と併せ、シンプルさを愛するAppleとしては刷新が求められていたといってよい。

iCloudでは連絡先やドキュメントなどのデータの自動同期ができるほか、App StoreやiBookstoreで購入したアプリやコンテンツを同期できる。iTunes Storeで購入した楽曲も、他のiOS機器にダウンロードできる。これにより、MacやPCと同期させて楽曲を転送することが不要になる。データはApple IDでヒモづけられ、最大10台までの機器で同期できる。

iPhone 4で撮影した写真がすぐさま画面の大きいiPad 2で閲覧できたり、自宅のMacで作成中のドキュメントをiPad 2を使って外出先で手を加えたり、といった使い方が想定されるだろう。iPhone、iPad、iPod Touchといった複数のApple製品を保有しているユーザーにはお得感が高い。

また、当初は米国内でのサービスとして、iTunes Matchが年24.99ドルで提供される。自分でCDからリッピングした楽曲と同じ曲が、iTunes Store内にあった場合、楽曲を同期できるというもの。このサービス、日本で提供されるかどうかは未定だ。

■問題はWindowsでどこまで使えるか
iCloudがPC(Windows)との連携でどの程度まで便利に使えるかは未知数だ。現行のPC版MobileMeの場合、Microsoft OutlookやWindowsアドレス帳との同期ができるものの、星の数ほどあるアプリケーションからすればほんの一部だからだ。

たとえば、Microsoft Officeは、MicrosoftのクラウドサービスであるSkyDriveに対応しているが、iCloudに対応する可能性は低いと思われる。ただ、これまでの経過からして、Mac版OfficeのiCloud対応はあり得るだろう。Appleとしては、iPhone、iPadのシェアを生かし、サードパーティに対応ソフト(iOS版はもちろんMac版やWindows版も)の開発を促したいところだろう。

■Apple製品ユーザーのためのクラウド
見てきたように、iCloudは「Apple製品ユーザーのためのクラウドサービス」である。Googleのクラウドサービスが、PC、Mac、iOS機器、Andoroid製品などほとんどのデバイスで使えるのとはコンセプトが異なる。iCloudをAndoroid製品に開放するかどうかについては情報がないが、難しいのではないか。また、ユーザー自らが任意のデータを転送しておけるDropBoxのようなクラウドサービスとも異なっている。

要するにiCloudは、急追するAndoroid製品との差別化を図りたい、Appleの新たなユーザー囲い込み策の一つと言えそうだ。むろん、サービスの質こそが肝心であり、オープン直後にトラブルが続出したMobileMeの「二の舞」は避けてほしいところだ。オープン後に、再度検証してみたい。


大島克彦@katsuosh[digi2(デジ通)]
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